2021年5月4日火曜日

追補漢詩3 題八詠樓

 
 題八詠樓  李清照
千古風流八詠樓,
江山留與後人愁。
水通南國三千里,
氣壓江城十四州。
 
 千古の風流 八詠楼、
 江山 留め与ふるは 後人の愁ひ。
 水は通ず 南国 三千里、
 気は圧す 江城 十四州。



五十二歳のとき(紹興五年・1134年)、金軍が臨安に迫り、臨安の西南にある金華に避難したときの作。
・八詠樓・・玄暢楼のこと。南朝斉の東陽太守沈約が立てた建築物で、玄暢楼を詠んだ詩作八首に基づく名。浙省金華。
・後人愁・・後人はこの詩の場合、作者とその同じ時代の人を指す。愁は、八詠楼から見える国土が金の敵に侵略された憂い。
・水通・・川は流れている。
・三千里・・極めて広い範囲ことをいう。
・十四州・・ここは、江南一帯。広い地域の意。

 
【詩意】 
千古の昔から、風格高く風雅なたたずまいの玄暢楼。
この楼閣から眺める景色の美しいさは、却って、私の憂いを増すばかり。
川や運河は江南の広い地域を通って、南の各都市へ繋がり、
憂国の気が川沿いの広大な江南一帯の十四州までも圧している。


夫・趙明誠に死なれて後は、金の中原への侵略によって、南国の江南の地を逃げまわる生活を強いられた。その時の心境を表した詩のひとつである。
国破れ、北から南へ逃げる惑う戦乱の中で、八詠楼の景色のすばらしさを詠うことによって、南宋の皇帝や南宋官僚の腐敗を批判している。第2句の「江山」「留与」「後人愁」の言葉には、強烈な批判が含められている。

 

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