浣溪沙 李清照
小院閑窗春色深 (閑窗=閒窗)(春色=春己・春已)
重簾未卷影沈沈 (簾=帘)
倚樓無語理瑤琴
遠岫出雲催薄暮 (出雲=出山)
細風吹雨弄輕陰
梨花欲謝恐難禁 ( )内は異本
(「春景」と題するもある)
《和訓》
《語釈》
・小院:小さな奥庭。
・窗:窓
・沈沈(じんじん):ひっそりと静かなようす。
・倚:もたれる、よりかかる。
・無語:語ることなく、おしゃべりすることもなく独りで。
・理:調子・リズムなどをあわせる。ととのえる。(あるいは)おさめる。
・瑤琴:瑤は、玉のように美しいさま。螺鈿作りの琴。
・岫:やまあい、みね。
・催:促す、急(せ)きたてる。 変化を起こさせる。早くさせる。
・梨花欲謝恐難禁:長恨歌の「玉容寂寞涙闌干、梨花一枝春帶雨。含情凝睇謝君王、一別音容兩渺茫」(その美しい顔はいかにも寂しげで、涙のはらはらと流れるさまはまさしく、一枝の梨の花の上に、春の細かい雨がはらはらと降り懸かってぬれているかのよう。(楊貴妃の霊は)思い込め、じっと見つめながら、天子にお礼を申し上げて言う「(馬嵬駅で)お別れしてからは、お声を聞くことも、お姿を見ることもできず、それらははるかに遠いものとなりました…。」によるか。
・恐難禁:ひたすらあなたを思うと、涙のはらはらと流れてやまない。
・恐:おそらく、たぶん。 恐れる、おびえる。
・「深沈琴陰禁」の押韻はわかりやすい。
《詞意》
中庭に向かう寂しい窓辺に春の色が深まり
垂らしたままの簾の陰にひっひりと控えて
楼の二階で語ることなく琴を弾いています
遠い峰から雲がわき日が暮れかかりますと
風がそよぎ雨も降り出して木陰をも濡らします
梨の花も散るほかないのでしょうか
《訳詩》
春深く
庭の窓辺に春深み
巻かざる御簾に陰落ちぬ
縁にしずもる琴の音
山に雲いで春暮れて
ささたる風に揺るる雨
濡れしは梨の花のみや
宋代の女流詞人の紹介と鑑賞のブログ。 「第一女詞人」と呼ばれる李清照の詞の鑑賞とその生涯の紹介のページです。 さらに「断腸詞人」と呼ばれる朱淑眞、「薄命詞人」と呼ばれる呉淑姫の作品を紹介しています。
2021年5月1日土曜日
6-浣溪沙・春色深
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