浣溪沙 李清照
莫許杯深琥珀濃
未成沈醉意先融 (沈=沉)
疏鐘己應晚來風
瑞腦香消魂夢斷
闢寒金小髻鬟松
醒時空對燭花紅
( )内は異本
《和訓》
《語釈》・莫許:そう多くは必要がない。そんなにも多くはいらない。
・琥珀濃:琥珀色(透明ないし半透明の、赤みをおびた黄色)の酒が濃くとろりとしている。
・杯深:盃が深い。
・未成:まだ…しないうちに。
・意先融:気分的にうっとりととろけてきた。
・疏鐘:(遠くからなので)まばらに聞こえてくる鐘の音。
・已應:すでにこたえる。すでに対応している。
・晩來風:夕方になってから吹き出した風。
・瑞腦:「沈香(じんこう)・白檀(びやくだん)」などと同じ香木の一種。香道で使う芳香を放つ木。
・魂夢:夢を見ている魂。夢魂。
・辟寒金:ここでは、髪を束ねて留めたかんざし。三国の時、昆明国から贈られた鳥が、粟のような金の粒を吐き、その金でかんざしや耳飾を作ったが、魏帝がその鳥が霜雪を畏れたので「辟寒台」という温室を作ったことから、その飾りを「辟寒金」と呼んだという。
・髻鬟:もとどり。髪の毛をまとめて頭の上で束ねた所。その束ねた髪。
・髻:もとどり。・鬟:髪の結び目。
・鬆:緩い。ゆったりしている。きつくない。結び目が緩む。
・醒時:(眠りや酒から)さめるとき。
・空對:むなしく向かいあう。
・燭花:ろうそくの焔。
《詞意》
深い杯で琥珀色の濃い酒をそんなにも多く飲むこともなく、
深くも酔わないうちに、気分的にうっとりといい心地になっておりました。
遠くから幽かに聞こえてくる鐘の音が、夕方になって吹き出した風にとけ込んでおりました。
いつの間に眠っていたのでしょう、香炉に燻る香は燃え尽きて、夢から覚めたことです。
髪を束ねていたかんざしが小さかったからか、もとどりは弛んでおりました。
醒めて猶、虚しくじっと蝋燭の紅い焔に向かっているばかりです。
(やはりお酒も眠りも結局私の深い憂いを解いてはくれませんでした)
比較的若いときの作品という。
「醉花陰(薄霧濃雲愁永晝)」でも「瑞腦消金獣」と詠った後「人比黄花痩」とその愁いを詠っている。
宋代の女流詞人の紹介と鑑賞のブログ。 「第一女詞人」と呼ばれる李清照の詞の鑑賞とその生涯の紹介のページです。 さらに「断腸詞人」と呼ばれる朱淑眞、「薄命詞人」と呼ばれる呉淑姫の作品を紹介しています。
2021年5月1日土曜日
5-浣溪沙・琥珀の酒も
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