浣溪沙 李清照
淡蕩春光寒食天
玉爐沈水裊殘煙 (裊=嫋)
夢迴山枕隱花鈿 (迴=回)
海燕未來人闘草 (闘草=鬥草・斗草)
江梅已過柳生綿 (綿=錦)
黃昏疏雨濕鞦韆 (鞦韆=秋千)
( )内は異本
《和訓》
淡蕩たる春光 寒食の天
玉炉の沈水 裊(にふ)なる残煙
夢は花鈿を隠せる山枕を迴(めぐ)る
海燕の未だ来たらず 人は草を闘(きそ)ふ
江梅 已に過ぎて 柳は綿を生じ
黄昏の疏雨 鞦韆を湿(うるほ)す
《語釈》・淡蕩:あわくゆったりしているさま。穏やかなさま。春の景。
・寒食:冷食。かんしょく。冬至の翌日からかぞえて百五日目は風雨が激しいとして、昔、中国でこの日には火を断って煮たきしない物を食べた風習があった。その日が「寒食節」。旧暦三月三日。翌日は春分から15日後の「清明節」。寒食の天:四月始めの「寒食節」の空。または寒々しい空。食は蝕に通ず?。
・玉爐:美しい香炉。
・沈水:沈香。沈は弱まる。鎮まる。
・裊(じゅう・にゅう):「嫋」ともある。においいろがうすい。
・山枕:両端が高くなっている枕。
・花鈿:首飾り。花の彫り物のネックレス。はなかんざし。
・闘草:「斗草」とも。芽生えた若菜を摘み競う。くさあわせ。また花器に草花を挿し、その技能の優劣で勝負を競うこと。
・江梅:水辺の梅。
・柳生綿:柳の糸(枝)がやわらかい芽を出す。柳の芽が白い繊毛を帯びるところから。「柳綿」は柳絮。
・黄昏(こうこん・たそがれ)
・疏雨:まばらな、細い雨。
・鞦韆(しゅうせん):秋千。ぶらんこ。中庭に置かれる飾りの付いた宮女が使った遊び道具。太陽のよみがえりをねがう儀式として寒食節にブランコに乗ったという。
《訳詩》 春の思ひ
春の光の淡くして 今を盛りの空の色
鎮もる香炉に けぶりの薄く
枕に埋もる花簪(はなかざし) 夢は廻れる 春の夢
海より燕の未だ来ず 若菜を摘みて草比べ
水辺の梅の既に散り 柳は白き芽を出だす
黄昏れに降る細き雨 庭のふらここ濡らしつつ
《鑑賞》
これも李清照の少女時代のものと思える詞。
自身の浅い春を詠っているのだろうか。物憂げでいて、少女には未来はまだその姿を現さない。
「寒食節」は仲春の最後の日で、ぶらんこに乗る競技が行われたといい、「鞦韆」は春の季語になっている。くさあわせも含め、春の行事が盛りだくさんに詠われている。
ふらここの虚しく揺れて春の雨
宋代の女流詞人の紹介と鑑賞のブログ。 「第一女詞人」と呼ばれる李清照の詞の鑑賞とその生涯の紹介のページです。 さらに「断腸詞人」と呼ばれる朱淑眞、「薄命詞人」と呼ばれる呉淑姫の作品を紹介しています。
2021年5月1日土曜日
7-浣溪沙・雨のぶらんこ
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