如夢令 李清照
常記溪亭日暮 (常=嘗)
沉醉不知歸路 (晚=欲)
興盡晩回舟
誤入藕花深處 (藕花=芙蕖)
爭渡
爭渡
驚起一灘鷗鷺 (灘=行)
「酒興」と題するもある ( )内は異本
《和訓》
常に記せり、溪亭の日の暮れ。
沈酔するに 帰路を知らず、
興尽きしに 晩く舟を
誤りて
驚き起つるは
《語釈》
・常:古、嘗と通ず(嘗:かつて。)「常」は「尝(嘗) 」という文字という説。
・記:おぼえている。・嘗記:昔のことを覚えている。
・溪亭:現山東省の済南七十二名泉の一つ大明湖畔の休息所。十五歳の時にそこへ出かけ、深い印象を覚えたという。
・沉醉:(沉=沈)酩酊する。少女が酒に酔ったのか、雰囲気に酔った気分なのか。
・不知歸路:帰る道が分からなくなった。
・興盡:充分に楽しみ尽くして。
・晩回舟:おそく舟を 帰らせる。
・藕:レンコン、ハスの花。
・深處:たくさん繁っているところ。
・爭:争う、競う。急いで。なぜ、どうして。 [~奈]いかんせん.
・灘:浅瀬、砂浜。
・鷗鷺:鴎や鷺などの水鳥。
《詞意》
渓流に臨むあの東屋の夕暮れを、私はいつも思い出します。
すっかり酔ってしまって帰り道もわからずに、
興も尽きて、遅くもなったので小舟で帰ろうとしましたが、
誤って入り込んでしまったのは、蓮の花の深い群れの中。
ああ、どうやって岸辺にたどり着きましょう、
急いで岸辺にたどり着こうとしましたら、
驚き飛び立つのは水辺の鴎や鷺といった水鳥達なのでした。
《解説・鑑賞》
天然に湧く泉で有名で「泉城」と言われる済南は、古い歴史を持つ街である。
李清照は、この現在の山東省の省都・済南で生まれ、北宋末の一七年間を過ごした地であった。しかし、金の南攻によって、彼女の後半生には帰ることの出来ない異国の故郷になってしまった。
この作品は、李清照が以前の情景を思い起こして作ったもので、彼女の処女作とも言われるが、誰もいない、深い茂みの岸辺に帰り道を見失った小船は後の彼女自身だったのだろうか。
「酒興」と題す本もあるが、後人のつけたものと見られる。
蓮と李清照は画題としてよく使われる。
《訳詩》
いつまでも忘ることない川の辺の暮
酔いすぎて帰り道迷ったこと
一日を楽しんで舟をかえせば
一面の蓮の花どこまで続く
どうすればいいのかと
あちらこちらと
抜け出ると驚いたこと早瀬飛び立つ
宋代の女流詞人の紹介と鑑賞のブログ。 「第一女詞人」と呼ばれる李清照の詞の鑑賞とその生涯の紹介のページです。 さらに「断腸詞人」と呼ばれる朱淑眞、「薄命詞人」と呼ばれる呉淑姫の作品を紹介しています。
2021年5月1日土曜日
1-如夢令・済南のうた
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