2021年5月5日水曜日

朱23.卜算子 (竹裡一枝斜)

 
 卜算子    朱淑眞

竹裏一枝斜、映帶林逾靜。
雨後清奇畫不成、淺水橫疏影。

吹徹小單于、心事思重省。
拂拂風前度暗香、月色侵花冷。



《和訓》
竹裏一枝斜き、映を帶びて林 逾(いよいよ)静かなり。
雨の後 清奇にして画成らず、浅水に横たはるは疏(まば)らなる影。

吹き徹るは小単于( しょうぜんう )、心事の思ひ重ねて省る。
拂拂たる風前 暗(ひそや)かなる香の度(わた)りて、月の色は花を侵して冷たし。


《語釈》
・竹裏:竹藪の中。裏は中。
唐の王維の「竹里館」「獨坐幽篁裏,彈琴復長嘯。深林人不知,明月來相照。」がある。
・映:光の反射。夕映え。
更に王維の「鹿柴」「空山不見人,但聞人語響。返景入深林,復照青苔上。」が思い浮かぶ。
・逾:いよいよ。いっそう、更に。
・清奇:清新で珍しい。清らかで珍しい。
・畫不成:絵にも描けない美しさ。
・疏影:まばらな影。
・心事:心に思い惑う心配事。
・小單于:ここは風がさわさわと吹き通る様をいう。・小:形や規模が小さい、すこし。・單于:めぐる。善于。
   「聴暁角」(李益)
  邊霜昨夜墮關楡 (辺霜昨夜関楡に堕つ )
  吹角當城片月孤 (吹角 城に当って片月孤なり)
  無限塞鴻飛不度 (無限の塞鴻 飛び度(わた)らず )
  秋風吹入小單于 (秋風吹き入る 小単于(しょうぜんう))
・拂拂:風がそよそよ吹くさま。
・風前:風の当たる所。
・侵:次第に入りこんでかすめる。


《詞意》
竹林の中に竹が一枝斜むいて、夕日の光が差込み、いよいよ林は静かです。
雨のあがった後のあまりの清らかさは絵にもかけないほど、浅く流れる水に日の影がまばらに散っています。

風は心地よくさわさわと吹き過ぎますが、愁いの思ひを更に重ねて振り返っています。
風そよぐ中 ひそやかな香があたりを覆い、月の色は冷たく花に染み入っています。

 

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